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漫画好きの読書箱

好きな本や漫画のネタバレと感想。

異色の高校野球漫画「砂の栄冠」ネタバレ感想 三田紀房

三田紀房先生の高校野球ストーリー漫画「砂の栄冠」は、創立100年目での甲子園初出場を目指すエース・中村とショート・七嶋。決勝戦敗退から2日後、七嶋は老人から1000万円を託されます。突然大金をもらった七嶋は・・・

「砂の栄冠」ネタバレ

樫野高校野球部が甲子園出場への決勝戦で戦っていました。エースの中村は「創立100年目での甲子園初出場」という夢を叶えるために全力投球しており、それを知っていた後輩の七嶋は必死でサポートし、チャンスを狙います。

けれども最後の最後で焦りが出て、チームのみんなの心が崩れ落ちて決勝戦に負けてしまい、夢が終わります。泣き崩れる中村を見ながら、泣けないでいる七嶋。

そして新キャプテンになった七嶋は、近所の熱心な樫野高校野球部のファンである老人・トクさんに呼び出され、1000万円が入った紙袋を渡されます。そして、そのお金はもともと今年甲子園に出場できたら応援団を送る費用にするつもりで用意しており、できなかったから野球部のために使ってほしい、というのです。

ほかの誰にも内緒で七嶋ひとりにだけ任せられたお金の使いみち。学校の先生や野球部OBたちは信用できないし、七嶋しか信用できないとトクさんは自分の大切なお金を託すのでした。

七嶋は、とりあえずそのお金をグラウンドの自分の定位置である三遊間に穴を掘って埋めて隠します。「甲子園に出るまで使いません」とトクさんに大見得をきったものの、大金を持っているという誘惑に勝てず、甲子園を見に行くお金が足りずに使ってしまいます。

そして甲子園で熱烈な高校野球ファンのおじさんおばさんたちと出会い、「甲子園で勝つためにはお客さんに好かれること」が大事だと教わります。

感想

野球の実力だけではなく、好かれるチーム、愛されるチームが甲子園で勝つために必要と知った七嶋は、「甲子園ノート」に覚えたことを綴りながら完璧なキャプテンを目指して目つきが変わっていきます。

自分が考えるチームづくりのために、七嶋は「演じる」ことを覚えていき、チームだけではなく先生やOBたちも自分の意のままに動くように演技を続けます。純粋な野球少年ではなく、もはや勝つために手を汚して嘘もつける汚れた人間だ、と自分を責めることもあります。

若い時は「自分が悪人ではないか」と悩むこともあります。世の中で成功するためには、時としてグレーなこともしなければならないからです。けれども七嶋は「試合に勝つ」ことだけを信念に、清濁併せ呑むことを学んでいき、ひとりの男としても成長していきます。

ただの青春野球漫画ではなく、人間の裏模様や画策が飛び交うこの漫画は「甲子園へ行く」という目標を掲げたひとりの男のサクセス・ストーリーに仕上がっています。これを読んだら、高校野球の見方が変わってしまうかもしれませんね。