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漫画好きの読書箱

好きな本や漫画のネタバレと感想。

漫画「結んで放して」ネタバレ感想 山名沢湖

「結んで放して」ネタバレ

山名沢湖先生の漫画「結んで放して」は、同人誌の世界で描き続けプロになった千畝が、当時あこがれの存在だった同人作家と再び出会う、なつかしくて切ない短編マンガです。

「結んで放して」ネタバレ

同人活動で会った憧れの人

浦田千畝は10年前、コミケで同人誌を発表していた。会場で憧れだった同人作家の日吉ルリにファンであることを告白し、それをきっかけに親しくなる。

4人の仲間たちと一緒に、喫茶店で漫画談義を楽しんでいた千畝。ルリは会社員をしながら同人活動をしており、毎回独自の作風で力作を発表して目立つ存在だった。

若い情熱に任せて、同人誌つくりのパートナー・ぴろりんと創作意欲全開で本をつくる千畝。憧れの人に「一人前」の扱いをされ、とても舞い上がっていた。

ルリに「今度一緒に本を作らない?」と誘われ、全力で描いた作品が「これ、すごいね。涙出た」と言われ、心に小さな「ともしび」が宿る。

ひとりプロになってしまう千畝

社会人になり、就職活動に失敗して出版社に作品を持ち込みし、成り行きのように漫画家デビューが決まる千畝。仲間たちにお祝いしてもらったあと、ルリから「わたし、転勤するんだ」と告げられる。

新天地でも漫画は描き続けるよ、というルリに励まされ、「私とルリさんはいつも漫画でつながっている」という絆が、千畝の支えだった。

ぴろりんは薬局に就職し、アシスタント的なことをしてくれるが、本格的な同人活動はできなくなった。

結婚したルリは漫画をやめた

何年も経って、ルリの年賀状の名字が変わっていたことに気づく。結婚したんだ、と。

お祝いする気持ちはあっても、内心千畝は「ルリさんが漫画を続けられるか」のほうが気になって仕方ない。けれど、結婚してからのルリは同人活動もやめてしまっていた。

プロ漫画家になったのに、未だに同人誌時代が原点である千畝にとって、「あの頃」はともしびであると同時に呪いでもあった。

仲間たちはいつの間にか、社会人の忙しさで消えていき、漫画を描き続けているのは自分だけ、という置き去りにされたかのような現実。

再会したルリに、千畝がかけた言葉

ある日、雑踏の中でルリと再会し、子供いるともうなかなか漫画なんて、と言って去ろうとしたルリに千畝は「みんな待っています!」と、ルリの漫画を待っている人たちがいる、と伝える。

「もう描かないんだ」とわかっても、ルリに片思いしてしまう千畝。

ルリは娘へのおみやげに、と千畝の本を手に取る。

感想

同人活動、という創作の世界を舞台に、プロ漫画家としてデビューした千畝は、同人時代の雲の上の人だった「ルリ」をずっと想い続けます。

それはもう、ほとんど恋のようなもので、漫画というつながりで千畝はずっとルリを追いかけていたんですね。

千畝は漫画を描き続けてプロになりましたが、たいていの人にとって同人誌というのは趣味の延長線上で止まってしまうか、セミプロのようなところで終わります。

憧れだったルリもまた、仕事で転勤した先で結婚して子供も生まれ、同人活動から離れていってしまったのです。

「漫画」というつながりがなければ、切れてしまう細いつながり。千畝はその絆をすごく大事にしていて、ルリがくれた言葉が「ともしび」となって漫画家としての自分を励ましてくれたわけです。

「これ、私の漫画です。よかったら読んでやってください」

もう描かなくなった憧れの人に言えた、最後の言葉。心に沁みていく物語でした。

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