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漫画好きの読書箱

好きな本や漫画のネタバレと感想。

マンホールで育った子供~丸い空の虹を~ネタバレ感想 福田素子

「マンホールで育った子供」ネタバレ

福田素子先生の漫画「マンホールで育った子供~丸い空の虹を~」は、不実な男性に弄ばれて人生に絶望した女性が日本から逃げ出し、モンゴルで「マンホールチルドレン」と呼ばれる孤児たちと出会い、生きることと向き合うお話です。

「マンホールで育った子供」ネタバレ

試し読みできます↓

男に捨てられ刺して海外へ逃げ出す

早瀬美津子の人生は、とてもつまらないものでした。両親が離婚、母は自分を邪魔にし、高校卒業と同時に就職してお茶くみ事務員に。

真面目に仕事をしても、高卒では生活するのがギリギリでさみしくて不安な毎日を送っていた中で、優しくしてくれた男性に惹かれ、関係を持ちます。

 

けれど彼は既婚者で、彼女のお腹に子供がいる、とわかった途端に生むのはやめろ!と迫られます。「迷惑をかけないから、産ませて!」という美津子を彼は殴り、ひどい言葉を投げつけてきてカッとなった美津子はその場にあった包丁で彼を刺してしまったのです。

うずくまる彼をその場に残し、逃げ出した美津子は警察に捕まらないように海外に逃げ出します。

マンホールチルドレンとは

やってきたのはモンゴルのウランバートル。もともとは豊かな生活を送っていたモンゴルの人々でしたが、経済援助をしていたソ連の崩壊とともに生活が暗転。極貧の中で子供を捨てる親が急増し、ホームレスとなった子供たちが3000人もいたのです。

マイナス30度のモンゴルでは、寒さをしのぐためにマンホールにもぐるしかなく、自然にホームレスの子供はマンホールの中で寄り添って暮らすようになっていました。

日のささない、薄暗く悪臭の漂う空間で暮らす子どもたちは、いつしか「マンホールチルドレン」と呼ばれるようになったのです。

モンゴルでお腹の子と心中するつもりが・・・

美津子はここを自分の死に場所に選んだのは、昔、テレビでマンホールに住む子供たちの番組を見ていたからでした。惨めだった自分よりもさらに悲惨な状況で生きている子供たちが気になり、死ぬ前に自分が持っている全財産を彼らにあげよう、と思ったから。

お腹にいる子とともに、ここで死のう。不幸な子どもたちをみれば、産まないほうが幸せなのだ、と自分に言い聞かせるために彼らに会いにきたのです。

真面目に働いていたので預金は十分で、ガイドを雇ってマンホールチルドレンのいる場所を尋ねます。しかし、ガイドの話では中国の臓器売買で狙われる子供が増えたため、最近ではそうした子供を警察が保護して孤児院に入れているから数が減った、と聞かされます。

マンホールチルドレンとの出会い

もういないんだ・・・と肩透かしをくらった美津子でしたが、マンホール暮らしの子供ふたりが美津子に食べ物かお金をください、とねだります。

ガイドは無視するようにアドバイスしましたが、美津子は食べ物を買ってきて与えます。お腹をすかせていた少女は、食べ物をもらった瞬間明るくパッと笑い、美津子はその笑顔に驚きます。

あんな悲惨な暮らしをしているというのに、この子はなんていい笑顔をするんだろう、と。彼らからマンホールにほかの病気の仲間がいる、と聞いて美津子は「明日もここにきたらごちそうするわ」と約束します。

絶望的な環境と子供たちの明るい笑顔

男のはドルジ、女の子はトヤーと名乗り、絶望とは無縁の輝くような目をしていました。なぜ、あの子たちはあんな笑顔ができるのだろう。自分を捨てた親、誰も助けてくれない世界を憎んではいないのだろうか、と美津子は思い悩みます。

美津子は自分の人生を振り返って、離婚した両親、自分を捨てた男を恨み、ドロドロとした黒い気持ちで満ちているというのに・・・

そして翌日、約束通り美津子は同じ場所で子供たちを待ちます。

感想と結末

人生に絶望して、モンゴルにマンホールチルドレンに会いにきた美津子でしたが、想像していたよりもずっと明るく元気な子供たちを見て、自分よりも不幸な子供を見てこれから死ぬことを正当化しよう、と思っていたあてが外れてしまったわけです。

家のない子どもたちは確かに劣悪な環境で生きており、幼い子たちがどうして暮らしていけるのかも不思議なくらいです。

 

美津子は自分のもっているお金で彼らを救おうとしますが、もちろんずっとそれで彼らが大人になるまで幸せに暮らせるはずもなく、中途半端な同情は毒にしかならないのです。

世界を恨み、人生を憎んでも仕方ないほどの生活でも、彼らは笑顔を失わない強さをもっていました。

彼らに比べれば、まだまだ恵まれている美津子は、最初はお腹の子と一緒に心中するしかない、と思い詰めていたのにもう一度やり直そう、と思い直します。完全なハッピーエンドではありませんが、ふたたび生きる気力を取り戻した美津子には幸せになってほしいと思えるお話でした。

>>「マンホールで育った子供」試し読み