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漫画好きの読書箱

好きな本や漫画のネタバレと感想。

愛を乞うひと あらすじと感想 下田治美 原作

下田治美 原作『愛を乞うひと』は映画化もされている小説です。孤児院から引き取られた10歳の娘が、その日から実の母親による地獄の虐待を味わう、という衝撃の内容。

小説版『愛を乞うひと』

『愛を乞うひと』の小説版では、ヒロイン照恵が施設から母親に引き取られ、不可解なまでの虐待に耐えます。このままでは殺されてしまう、と思うほどのひどい虐待の日々。血の繋がりがある母親なのに、どうして娘に対してこんなひどいことができるのか。

情け容赦なく照恵に暴力をふるい、ののしる母親の姿はまさに鬼でしかありません。照恵は虐待をされて憎しみすら感じますが、同時に『実の母親なのだからどこかで自分を愛してくれるに違いない』という期待も抱いています。それが決して叶わない望みであるとわからされるまでは・・・

 

小説版では情け容赦ない虐待をする母親の内面には触れられておらず、ひたすら理不尽な行為をする鬼畜母として描かれています。なぜ?どうして?と、虐待されながらもその理由を探し続ける娘。父親が違う弟には、母はそれほどひどいことはしません。

照恵は何も悪いことをしていないのにせっかんを加えられるたびに「ごめんなさい!許して!」と懇願し、母に殴られる理由も意味すらもわからないままに大人になっていきます。

 

そして母親から逃げ出し、優しい夫とかわいい娘に恵まれた主婦になった照恵は、優しかった亡き父親の遺骨を探す旅に出ます。父は台湾人で幼い頃に結核で亡くなっており、照恵は孤児院に預けられていました。

暴力と恐怖で母親に支配された記憶に苦しめられながらも、遺骨探しの旅で出会った人たちから伝え聞いた父の思い出とともに、母がもたらした心の傷と壮絶な過去に向き合います。

 

小説版・『愛を乞うひと』


漫画版・曽根富美子の「愛をこうひと」

曽根富美子コミカライズによる漫画版の「愛をこうひと」も、出版されています。小説版と比べてみて『照恵の母親は、なぜ娘に対して非人間的な虐待をしていたのか』が詳しく描かれています。

また、小説ではお父さんが台湾人という設定でしたが、その設定もなくなっており『結核を患って体が弱かった優しい父親』となっています。

 

「番外編・闇がひらくとき」に、照恵の母親であるトヨ子の若い頃の人生が描かれており、はすっぱだけれども明るいところもあったトヨ子が義雄(照恵の父)と交際中に、チンピラに狭い路地で襲われてしまった事件がトヨ子の内面に大きな影響を及ぼします。

トヨ子はその事件以来、自分が襲われたのは義雄のせいであると強く責めて責任をとらせ(結婚した)、さらに義雄との間に生まれてきた娘の照恵を「自分を襲った男の子」として激しく憎みます。

 

「自分が幸せじゃないのに、子供の幸せまで考えられるものか」というトヨ子の言葉に、照恵を虐待していた理由のすべてが集約されています。

トヨ子は自分の身に起こった不幸な出来事をすべて娘にせいにすることで、精神的均衡を保っていたのでしょう。もうひとつ、ラストシーンでボケたトヨ子が幼いころに両親から虐待を受けていたこともほのめかしていました。

 

漫画版の照恵は、自分を虐待した母親への愛を求める執着心を綺麗に捨て去り、最後で痴呆症になったトヨ子を受け入れます。小説版よりはかなりスッキリしたエンドになっています。

 

漫画版『愛をこうひと』試し読み↓

>>漫画版「愛をこうひと」試し読み

感想・重いテーマに向き合いたい作品

親からの虐待、というテーマ自体重いものですが、この作品がさらに重みを増しているのが「血のつながりのある母からの理不尽な虐待」であるということです。

たとえば、義理の母親であれば、この人とは血のつながりがないから仕方ないと理由を見つけてあきらめることができます。

 

けれどもヒロインの照恵は、自分を産んでくれた母との血のつながりを意識するがゆえに、決して「なぜ?どうして?」という疑問を解決することができなかったのです。

照恵自身が母となって、娘を育てているあいだにも、自分の分身のような存在である我が子を愛せないなんて信じられないという思いを深めていきます。照恵にとって救いだったのが優しかった実父の存在で、彼の愛情があったからこそ少なくとも照恵はまともな人間になったのでしょう。

 

トヨ子がたとえ過去に親から虐待を受けたり、男に乱暴された心の傷があったとしても、それを娘の虐待の言い訳にはできません。

照恵は母親が自分と同じような考え方や気持ちを感じる人間だと考えていたからこそ、長い間理解できずに苦しみ続けましたが、過去を探す旅に出たことでやっと『わたしを虐待した人間の気持ちなど、理解できなくていいのだ』と気づいて長年の苦しみから解放されます。

 

それは絶対に愛をくれることがない「母親」への執着心であり、『愛を乞わない』ことで母に虐待された憎しみからも卒業できた、ということだったと思います。

小説版よりも、漫画版のほうが心情的にわかりやすくて好きでした。

 

>>漫画版「愛をこうひと」試し読み

 

 

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