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漫画好きの読書箱

好きな本や漫画のネタバレと感想。

電子限定小説版「食糧人類」ナツネと山引のアナザーストーリー解説

食糧人類ネタバレ

大人気コミック「食糧人類-Starving Anonymous-」(蔵石ユウ 、イナベカズ) の原案小説が電子限定版のライトノベルとして登場! 原案者の水谷健吾先生の手により、「ナツネと山引のアナザーストーリー」が展開される小説版「食糧人類」です。

久しぶりに「面白い小説読んだな〜!」と思えた内容で、コミック版のファンにも超おすすめ。小説版とコミック版の違いを中心にレビューしていきたいと思います。

 

コミック版とライトノベル版の違い

↓これがライトノベル版。試し読みできるでー

 

ライトノベル版は、基本的にコミック版とまったく違う「平行世界」だと考えていいです。

もともとの原案の世界観に近く、貧富の差が激しく食糧危機に陥った奴隷制度がある人間社会に突如として現れた巨大生物が圧倒的な力で支配し、隷属しなければ人類存続ができない世界。

 

現代社会でひそかに巨大生物が人類を飼育して家畜として食べていた、というコミック版の設定とはかなり違います。

 

文章で説明するとわかりづらいので、箇条書きにしてみます。

 

【コミック版食糧人類の世界】

 

・一般人は巨大生物の存在すら知らず、工場に誘拐された一部が極秘で家畜化されて食糧として提供されていた


・政府が巨大生物の支配下にあり、その事実は公表されていない。研究所で「生殖種」「増殖種」等の研究が行われていた


・ナツネは「6歳」。「増殖種」を母に持つ「増殖種の完全体」。肉体が再生する超人能力がある


・巨大生物がナツネに腹の中から裂かれてあっさり死亡。さほど強靭な肉体ではない?


・人肉はあくまでも食糧であり、料理をしている描写はみられない


・巨大生物は人間語を理解できるが、翻訳人間を通してしかコミュニケーションできない

 

【ライトノベル版食糧人類の世界】

 

・貧富の差が激しく、食糧危機に瀕しており、4割が奴隷化されていた人類社会


・よその星からやってきた巨大生物に人類は制圧される。人間を食糧とするのが目的


・巨大生物の殻は固く、水爆でも破壊することは不可能な強靭な体


・ナツネは「32歳」。回復力・筋肉の密度が高い肉体で巨大生物が絶賛する「超高級品質の肉」だが超人ではない


・山引は「研究員」で、寿命を伸ばすために体の半分をモンスター化した


・「杏」というナツネが愛する女性が革命家として登場する


・今までの人類を「旧人類」、巨大生物を「新人類」と呼称


・ナツネと山引が人類存続のため巨大生物と交渉。柵の中に人間を囲い、一部人類を高品質の食糧として提供すると提案した


・巨大生物は人肉を嗜好品として扱いかなりのグルメ。料理・味付けを好み「美味しい肉」に執着する


・「増殖種」にあたる無限食肉は「芋虫」と呼ばれている


・「伊江」「カズ」は登場しない。ナツネは政府に抵抗する革命家の一員だった


・巨大生物は人間的感性をもっており、人語を話せる。意外にペラペラしゃべりまくる

 

同キャラ使った平行世界。ナツネ「6歳」→「32歳」奴隷出身の革命家

小説版は完全に別物で、大人の体で「6歳、増殖種」だったはずのナツネが、32歳で奴隷出身の反政府革命家という設定で出てきます。

手足をもぎ取られてもつぎつぎに生えてくる増殖種という設定もなくなり、「普通の人と筋肉や回復力が違う血筋」程度で超人でもありません。

また、「杏」という黒髪の綺麗な女性と奴隷時代に知り合い、自由を得るために反政府組織に属し、仲間とともに革命を行おうとしていたところ「未確認生物」の手によって社会が崩壊。

巨大生物に誘拐され、美味しく食べられそうになるも、一緒になった山引と出会って共闘、という流れ。

 

しかも、ナツネは「こいつのお肉、他のよりも一番美味しい」と巨大生物に目をつけられたためにポッドの中で長期保存され、アレを搾り取られてしまう、というカワイソーな展開でした。

彼の子供たちは美味しい超高級食肉として、新人類の憧れの贅沢品になります。コミック版でも小説でも「最高においしいお肉」的な扱いで気の毒ですね・・・。

 

山引は研究者で巨大生物お抱えのマッドサイエンティストとして生き延びる

山引は研究者で「人間を食糧にしよう」と研究していたところ、さらわれてしまったという設定。えーと、性格はコミック版とほぼ変わっていません。あのまんまです。

「僕は好奇心の味方だ!」と言って、ほかの人間が唐揚げにされようとお刺身にされようと、自分のワクワクを満たす研究さえさせてもらえるなら、どんなエグいこともやっちゃうよ!的に、巨大生物お抱えのマッドサイエンティストとして見事に生き延びます。

芋虫つくったり、子供がいっぱい産めるからとマンボウつくったり、無限増殖するアメーバ人間つくったり、ええ、喜んでいましたね・・・。

彼は150年以上生き延びることになるのですが、その過程で自分の肉体改造を行い、半分モンスターになってしまいます。

あるときはケンタウロスのような下半身お馬さん、そのつぎはラミアみたいな下半身蛇男・・・でもいつまでたっても頭の中身は若いままで最後の最後まで山引でした。

やつらがグルメなのにつけこんで「こうしたらもっと人間、おいしくなりますよ!」交渉材料に、人類を存続させた彼の手腕が見どころです。

 

巨大生物は宇宙人で、おまけにグルメだった!

「ほかの星からやってきた」と語る、巨大生物の王。平たく言えば「宇宙人」です。

おいしいお肉を求めて宇宙をさまよい、地球に降り立ったところ、「人類」という最高においしい食材を発見してしまったのでした。地球は彼らにとって「旨味の星」

「生でかぶりつくのが、一番美味しい!」と、頭からボリボリ食べていましたが、山引の提案で茹でて煮付けにしてみたり、塩でもんで味付けしてみたりとだんだんグルメになっていきます。

「腹を満たすだけ」という本来の食糧では飽き足らず、「より美味しく、高品質なお肉が食べたい!」と非効率的な方法で人類を家畜化していきます。

 

人間も、「オーガニックがおいしい!」「自然の環境で伸び伸び育った豚の肉はおいしい!」とかやっているわけですが、生物の頂点から落ちた人間が新たな支配者に食肉にされてしまう、という皮肉さがヒシヒシと伝わってきます。

人類が完全に家畜化完了したあと、新人類の子供たちが学校で(人間みたいな生活をし始める)「命は大事だから家畜である旧人類をむやみにいじめたりしてはいけません」なんて教えていて、逆の立場になったら「美味しく食べてあげます」なんてたまったもんじゃないなあ、とわかるお話。

これを読んだあと、「菜食主義者になろうか」と思う人が増えるのではないでしょうか。

 

第三章「絶食時代」でのどんでん返し

ナツネと山引が協力して、旧人類が太刀打ちできない圧倒的な力をもつ新人類から、一部の旧人類を一定期間ある程度の自由と安全を保証してもらうよう交渉し成功。

その結果、ストレスなく育てられた人間のほうが「美味しくなる」と判明したため、18歳までは何も知らない若者たちがのびのびと育てられ、「高級品」を納品することで生きながらえる社会ができあがります。

しかし、いつまでもそんな歪な体制は続かず、反抗勢力により「二三〇〇年戦争」が起きて完膚なきまでに人類は叩きのめされ、さらなる苦難の時代を迎える人類。

山引の研究成果により、滞りなく人肉が補給され、新人類の人口が爆発的に増えたことにより食糧難がやってきます。

 

そしてやってくる「絶食時代」・・・山引は百年以上やつらに従順に研究しつづけていましたが、裏である研究を進めていました。その研究によって「一矢報いる」ことはできましたが、新人類を駆逐するには至りません。

ラストで少女が連れてきた「豚」が一体何なのかが判明し、どんでん返しが起こります。実は人類は・・・というやつです。

 

感想・めっちゃ面白かった!

有り体な感想ですが、『めっちゃ面白かった!』です。最近ずっとコミックばかりで小説読んでなかったんですが、久々におもしろい小説に当たったなあって感じ。

コミック版とは世界が別物だけど、もしもナツネと山引がこちらの世界に生まれていたら、こう行動するだろうなあというキャラのブレなさが良かった。ナツネは、愛と革命に生きる男、という感じでカッコよかったです。超人設定はありませんでしたけれども、これはこれでいいですね。

山引も期待を裏切らないマッドサイエンティストぶりで、「キミはそれでいいんだよ、うん」と背中を押したくなるイケイケドンドンな科学者として仕事をまっとうしました。

それでも、彼なりの正義みたいなのがあって、ちゃんと裏で新人類をやっつける計画は立てていたんだなあ、と。ナツネとの友情?みたいなものも人生の終わりまでつづいていて、なんか良かったです。

何が言いたいかって言うと、『ナツネと山引好きなら、とりあえず読んでおこうぜ!』と声を大にして言いたいくらい、イケてるお話でした。

 

>>「食糧人類(小説版)」試し読みする

 

 

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mangazuki.hateblo.jp